アイシールド21夢

□瞳の強さ
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滞在しているホテルの近くにあるグラウンドは広い。
けれどアメフトの練習をするにはちょうどよい大きさだった。
個別にパスルートを練習する者や、ヒル魔お得意のトリックプレーの練習をする者。
選手たち全員が数日後に控えたアメリカとの決勝戦を楽しみにしていた。
と、そのとき飛ばし屋であるキッカーの武蔵がグラウンドを遙かに超えた場所にボールを蹴り出してしまった。
フェンスの向こうは公道であるため、棗は休憩時間になってすぐにそのボールを拾いに行った。
飛ばされたであろう道を見渡しながら歩いて行くと、垣根から茶色いボールが覗いていた。
棗は表情を明るくしてそれに駆け寄ろうとした。
だがボールはその道を反対側から歩いてきた不良のような男たちに拾われてしまった。
棗が慌ててその男たちに近寄ると、男たちはにやけた顔で棗を出迎えた。
ジャージを着ている棗を見て、彼女がボールを拾いに来たことをわかった上でからかおうとしているのだろう。
残念ながら話すことのできない棗はボードに英語を書き込んで返してもらおうとした。


<すみません、そのボールは日本チームのものなんです。返してもらえますか?>

「チームジャパン?ああ、わざわざ殺されにきた馬鹿チームか」


一番体格のいい男が馬鹿にしたように言った言葉に、棗は眉を寄せた。
だがアメリカでの喧嘩がいかに恐ろしいものかを3年間で学んでいる棗は、感情を押し込めてもう一度ボードを突きつけた。
だが男は鼻で笑い、棗の聞き取れない早さで仲間たちに何かを告げた。
すると男たちは盛大に笑いあい、そして棗を取り囲んだ。
体格と背の高さがある男たちに囲まれた棗は外側から全く見えなくなってしまった。
唯一棗の姿を伺えるのは足下の隙間からと、上空からであろう。


「ジャパニーズは具合がいいって聞いたけどな」

「こんな小さいガキやろうっつうのか?おまえ」

「ユース大会関係者なんだからこんなナリでもジュニアスクール以上だろう?」


聞き取れない部分も多くあったが、わかってしまった部分だけでもこの後の予測が付く。
顔を青くした棗をみて笑う男たち。
恐怖に震える指が、胸に抱えたボードにくくりつけられたデビルバットを押そうとしたその瞬間。
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