アイシールド21夢

□ホイッスル
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カジノで棗と出会ってからというもの、クリフォードの心には靄がかかっていた。
ふわりと揺れた黒髪。
まっすぐに見つめた強い瞳。
そしてあの陽だまりのような笑顔。
思い出すだけで心臓が鳴るのがわかる。

ーーーあれは、なんだ。

ただの日本人。
何度自分にそう言い聞かせても、頭も心も納得しなかった。
たとえるならーーー、それすらも思い浮かばない。
同じ人間、というにはあの笑顔は純粋すぎた。
ならば人間に化けた天使か女神。

ーーーあるいは悪魔。

考えるたびに、一瞬のうちに煌めいた虹彩と完璧なほどの甘さで弧を描いた唇を思い出す。
舌打ちをしてもシャワーを浴びても何をしても、クリフォードの心から棗が消えることはなかった。

そうこうしているうちに決勝戦の時間が近づいてきた。
バスに揺られ会場に着くと、急き立てられるようにロッカールームへ。
未だ消えない棗に舌を打てば、隣のタタンカが意外そうにクリフォードを見た。
試合直前に"荒れている"クリフォードなど初めて見るからだ。


「…クリフォード?」

「なんだ」

「いや、…どうかしたのカと」

「…なんでもない」


クリフォードはそういったが、雰囲気は確実に"なんでもある"という真逆を示していた。
タタンカが首をかしげると、クリフォードの奥にいたバッドとパンサーも同じように妙な顔をしている。
ドンはいつも通り静かに本を読んでいるが、その瞳は本当に文字を追っているようには思えない。
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