アイシールド21夢

□家へ帰ろう
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ペンタグラム作戦会議、という名称の馬鹿騒ぎまであと30分弱。
珍しく早く着きすぎそうだ、とバッドは時計をのぞき込んで思った。
撮影がおして1時間近く遅刻することもある彼だが、今日に限って珍しく撮影はスムーズだった。
朝も目覚ましよりも早く起きられたし、渋滞に引っかかることもなく仕事に行けた。


「フーン…。いいことがあれば嬉しいけどな」


チュ、と誰にでもなく口づけるように唇を鳴らす。
だがもう半日終わりかけている"今日"になにか変わったことがあるのだろうか。

ーーークリフォードの人気が俺に移る、とか

そう考えて、ありえないかと自嘲する。
ふと視線を信号にやれば、あと数秒で変わるだろうという時間。
バッドは足を踏み出そうとして、正面に向いた。
と、奥の公園にいつの間にか見慣れた日本人特有の絹のような黒髪を見つけた。
ベンチに座った彼女の足下には、数匹の犬。
そしてそのその犬のリードを持つのは黒服・サングラスの屈強な男たち。


「おいおい…さすがにハリウッドのアクションスターでも難しいぜ?」


ラインマンのような身体つきをした男が2人。
しかも棗との距離はかなり近く、腕を伸ばしただけで棗は捕まってしまうだろう。
加減を知らなさそうな腕が一瞬でも力を込めれば、棗の腕はいとも簡単に折れてしまうだろう。
頭の中で必死に策を練りながら近づいていくと、男の1人が棗に手を伸ばした。
最悪の予想が目の前に起こり、バッドは息をのむのと同時に声を張り上げた。


「ヘイ!ナツメ!」


棗が振り向くのと同時に男たちは一瞬警戒したように肩をビクつかせた。
だがすぐにその肩に込められた力を抜いて、ほとんどノーガードに近いような状態になった。
自分がなめられていることを察知したバッドは男たちをにらもうとしたが、今はそれよりも棗だ。
にこやかすぎる笑顔を向けられたバッドは、笑うより先に逃げろと言ってしまいたかったがそれができずに舌を打つ。
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