アイシールド21夢

□香る日
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その日は糞小動物から異様に甘い匂いがしていた。


ある月曜日、糞小動物はいつもよりも甘い匂いをさせて朝練に来た。
化粧品の匂いでもなく、香水の匂いでもない。
使っているシャンプーや整髪料の匂いにはもう慣れたはずだ。
その甘さに意識が行って、糞小動物をまともに見られねえ。


「棗ちゃん。昨日教えたの、近くのお店にあった?」


糞マネが糞小動物に聞いて、糞小動物のにこやかな笑顔と頷きに満足したように笑う。
何か買ったというのなら、この甘さはその匂いかもしれない。
どうせ聞いたところで無駄な知識が増えるだけだ、と思ってはいるがその心に反して口は動いていた。


「糞小動物。今日なんか付けてるか?」


糞小動物はボールを抱えてカゴに落としていく。
しかたがねえから手伝えば、たったそれだけのことに嬉しそうに笑う。
隣を歩きながら聞けば、何度かの瞬きの後にポケットからなにかを取りだし手渡した。
チューブ状のそれはよく見ればチェリーと書かれたリップクリーム。
蓋を開けて匂いを嗅げば、アメリカ製品だからなのか、甘ったるい人工的なチェリーの匂い。
そのくどい甘さに眉を寄せれば、糞小動物は苦笑して見せた。
二人してボールをカゴに落とすと、糞小動物は俺の手を取って丸い文字で話し始めた。
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