アイシールド21夢
□チョコレート戦争
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日曜日、バレンタイン用のチョコをひとつだけ作って持って来い。
棗がヒル魔からそう言われたのは金曜日の放課後だった。
ボールを片付けているときにヒル魔がこっそりと耳打ちしてきたのだ。
聞かされた棗はキョトンとしてヒル魔を見上げた。
アメリカにいた3年間はもらう側であったし、アメフト部に入ってからたくさんの人に世話になった。
本命チョコを渡す相手が居ないのだから、感謝の気持ちを込めてたくさんのチョコを作るつもりだったのだ。
<ひとつだけ、ですか?色んな人に日頃のお礼に作ろうと思ってたんですけど>
「ひとつだけだ」
<でもデビルバッツのみんなとか、タケ兄のご家族とかにも>
「…親とムサシの親になら構わねえ。だがアメフト関係者には絶対に渡すな。ムサシにも」
いいな、と言うのと同時にヒル魔は棗との距離を詰めた。
先ほどまであったちょうど良い距離は音もなく縮められ、目の前にヒル魔の顔があった。
その声色の強さと顔の近さに驚いて棗がとっさにうなずくとヒル魔は悪人のように笑った。
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