コナン夢

□はにかみを数えて
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入学式を終えて教室に入ってみると、黒板には少々乱雑な文字で"好きに座っとけ"とあった。
その乱暴な言葉に園子と棗は顔を見合わせて、呆れたり苦笑したりする。
どうしよっか、と話すのは席の位置のことで、園子と棗が近くに座るのは話すまでもない決定事項だ。
窓際の後ろが空いてるじゃん。ラッキー!と喜んで走っていく園子の後ろ姿を、棗は追いかけようとした。
だが気付いたように振り返ると、鞄を担いだままの新一を見つめた。
そして一度視線を合わせ、しかし数秒もしないうちに視線は下へと向けられてしまった。


「あ、…あのね、新一くん、」


少々言い辛そうに口ごもる棗に新一は小首をかしげた。
肩に背負うように持っていた鞄を下ろすと、棗の声を聞き取りやすいようにかがむ。
新一がん?と言葉尻をあげて棗を促すと、彼女は小さな声で続けた。


「あの…良かったら、その…、、隣に…座っても良い、かな?」


棗の言葉を両耳でしっかり拾った新一は、一瞬内容が理解できなかった。
数秒の間を置いて、脳内でその言葉を充分にかみ砕く。
そしてゆっくりと息を吸って、吐く。
だが一気に高鳴った心臓の音と熱くなった顔は隠せない。
耳が熱いのを自覚しながら、頬を染めている棗を見る。
けれど間を置きすぎたのか棗が不安そうな瞳で新一を見上げてきた。


「…新一くん?…あの、いや…だったら」

「バーロ!嫌なわけねーだろっ」


怒鳴るように声を荒げ、棗の"嫌ならば"という言葉を否定する。
突然張り上げられた声に棗は驚いた様子だったが、新一の言葉を聞いて表情を緩める。
嬉しそうにそして安心したようにふわりとはにかんだ棗に、新一の頬と耳はまた熱を持つ。
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