コナン夢

□はじめの一歩
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翌日、棗は英理に手を引かれて工藤家をおとずれた。
少々人見知りの気が強い棗は優作と有希子にはおずおずと挨拶をしたものの、奥に新一を見つけると一気にパッと表情を明るくさせた。
その変わり様は優作や有希子を苦笑させ、小五郎と英理を呆れさせた。
だが棗はそんなことを全く知らず、英理にちゃんと断ってから新一のところへ駆け出していった。


「しんいちくんっ。きのうはありがとう」

「おー。みつかってよかったな」

「うん!」


棗は全身でうなずくと、きょうもおかあさんにゆってもらったの、と髪ゴムを彼に見せた。
新一がほんとうだ、と笑うと彼女も嬉しそうに笑って、もう一度ありがとう、と礼を言った。
そんなほほえましいやりとりを見ながら大人達は笑い合っていたが、優作の口から昨日の話が出ると途端に眉間に力が入ることになった。
髪ゴム紛失事件は決して棗の不注意が原因で起こったわけではなく、どこかの悪ガキが仕組んだことなのだという。
棗がいうには、髪を引っ張られてそこから攫われてしまい心当たりを探し回ったが見つからず、途方に暮れていたときに新一に声を掛けて貰ったらしい。
新一は事情を聞いているうちに棗が幽霊が大嫌いだと言うことを知り、一週間前に幽霊が出たと噂が立っている神社にあると推理した。
これは少年が言い放った、お前ひとりじゃ絶対取りに行けないところに隠してやるからな!という言葉にも当てはまっていた。
そしてその推理は見事に当たり、新一は狛犬の足下におかれていたゴムを見つけたーーー。
これが今回の事件の真相だった。
話を聞きながら小五郎も英理もその髪を引っ張ってゴムまで盗んだ少年にメラメラと敵意を燃やしていた。
棗は両親が自覚するほど引っ込み思案であり、涙腺が緩いことやおっとりとした性格に加えてあまり人を疑わない女の子だった。
だからなのか良くからかわれることがあるようで、こういった被害に遭うことは初めてではない。
だからといってからかいともいじめとも言い難いそんなことをする子を放ってなどおけないし、夜遅くまで探していたせいで二次被害に遭わないとも限らないのだ。


「ったく!棗に聞いてその悪ガキをとっちめてやる!」

「ちょっとあなた…、」


鼻息荒くいきり立っている小五郎が棗から少年の名前を聞きだそうと立ち上がったとき、ドアが開いた。
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