コナン夢

□はじめの一歩
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そこにいたのは新一で、小五郎は彼に詰め寄って少年のことを詳しく聞き出そうとした。
けれど新一はダメだよ、と言ったきり口を閉ざしてペットボトルをよいしょ、と持ち上げた。


「あら新ちゃん、大丈夫?」

「うん。向こうでなつめといっしょにのむから」

「仲良くなったのね」

「………」


有希子の問いかけには答えずただ顔を赤くしてその場を立ち去ろうとした新一は、目の前に立ちふさがった小五郎を見て少しだけ驚いたように顔を歪めた。
小五郎がしゃがみ込んで彼に顔を近づけるとのけぞって距離を取ろうとしたが、突き刺さる他の大人の目もあってくしゃりと髪を掻いた。


「だってなつめ、おれにもそいつのなまえ、おしえてくれなかったから。それに"今日のことおとうさんたちにはないしょね"って言ってたんだ」


だからほんとうはとーさんにもはなしたくなかったんだけど、少し弱々しい声で続けた新一に有希子はこそばゆい感覚を覚えながら小さく苦笑する。
あぁ、この子はちゃんと棗ちゃんを護ろうとしたんだ、と。
きっと不安で泣き出しそうになっている棗ちゃんを見つけたとき、自分に出来ることをその小さな頭でたくさん考えたのだろう。
そして自分が出来ることを精一杯の力でおこなって、結果を伴った。
本当は帰らないといけない時間だと分かっていたはずだ。けれど例え親に怒られたとしても優先すべきことは"棗ちゃん"だったのだ。
だからずっと棗の手を握りしめながら帰ってきたのだろうし、昨日だって優作と自分がタッグを組んで問い詰めなければ真相を話すつもりもなかったのだろう。

ーーー我が息子ながら、やるわね…

くすりと忍び笑いをしてから有希子は新一の頭を数度撫でて、さぁ棗ちゃんが待ちくたびれてるわよ、と新一を促した。
新一は一度有希子の顔を見て、彼女がうなずくのをみてからその部屋を後にした。
ギィ、と音を立てて閉まる扉を見つめながら、大人達は子どもの成長の早さに驚くしかなかった。
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