コナン夢

□歩み続けること
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工藤家からの帰り道、英理と手を繋ぎながら棗は心ここにあらずと言ったようになにかを悩んでいた。
うーん、と小さくうなる娘の姿にふたりは首をかしげ、英理がどうしたの?と問うても生返事が帰ってくるだけ。
だが家に帰ってすぐ、棗は決意を固めたらしくようやく声に出してふたりに宣言した。


「わたしも、しんいちくんみたいになにかやりたい!」


ふたりはその言葉に目を瞠って、少しの間沈黙が降りた。
両親が沈黙している間も棗の瞳は力を持っており、その想いが嘘偽りないものだと言うことが分かる。
やっと英理がどういうこと?と聞き返すと、棗は新一との約束を堰を切ったように話し始めた。
そしてようやく棗の言葉の意味が"新一のサッカーのように、自分もなにか習い事をしたい"というものだと言うことが理解できた。
ようは、いじめられないように些細なことでも良いからなにかを始めたい、という訳だ。
小五郎と英理は互いに顔を見やって、苦笑をもらす。
昨日までいじめられても泣きはらすことしかできなかった棗。
積極的に人と交わることが出来ず、その素直さは女の子達といるときは笑顔を連れてくるが、男の子達からすればかっこうのえさのようなものだった。
そんな彼女が勇気を振り絞って、いじめっ子に立ち向かうための術を考え、変わろうとしている。
たったひとりーーー工藤新一との出会いによって、棗は少しだけだが強くなったのだ。


「ふふ。新一くんに感謝ね、あなた」

「…ふんっ」


小五郎は悔しそうにそっぽを向いてしまったが、娘に自我が芽生えたことが嬉しいのか、瞳だけは優しい色を帯びていた。
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