コナン夢

□残念ながらべた惚れ
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棗が工藤家のチャイムを押すと十秒も待たないうちに奥の玄関の扉が開いた。
そこにはまだ制服のズボンとワイシャツのボタンを半分留めただけのだらしのない格好をした新一がたたずんでいた。


「わるい、棗。入って待っててくれ」


半ば叫ぶように新一は告げて、すぐに引っ込んでしまった。


「うん。お邪魔します」


聞く人間は誰もいないが断りの言葉を述べてから門扉を開けて、玄関の大きな扉を開く。
そしてもう慣れたといわんばかりに棗は扉をくぐり、キチンと靴をそろえて工藤家に上がり込んだ。
ゆったりとした棗とは対照的に新一はバタバタと走り回りながら今になって学校の準備をしているようだ。
数学に英語にー、あとはーーー、と焦りながら教科書をそろえている新一に棗は苦笑しながら救いの言葉をかけた。


「社会と体育、あとは現代文だよ」

「そっか、今日体育か」

「うん。たしか男子はサッカーで女子はバレーだって」

「おっしゃ!」


新一は棗が告げたサッカーの言葉にガッツポーズをすると、喜びを隠さぬまま鞄に教科書を滑り込ませていく。
棗はソファにあったハードカバーの本を見つけるとくすりと笑って、キッチンに立った。
そして新一が制服をしっかりと着こなしてすべての準備を終えた頃には、テーブルの上には美味しそうに湯気を立てる朝食が並んでいた。


「あれ?棗、なんでオメー飯なんか…。時間ねえだろ」

「大丈夫だよ。新一くん時計見てみて」

「ん?」


棗の言葉に新一が時計を見上げると、針はいつも棗が迎えに来る時間よりも三十分ほど早い数字を示していた。
新一が意外な事実に目を瞠っていると棗は穏やかな声で続ける。


「新一くん昨日ミステリーの新刊買ってたから、夜に謎解きしながら読んだあと早起きしてもう一度読み返してると思ったの。
 本読んでるとご飯も忘れちゃうみたいだし、時間の感覚も狂ってそうだなぁと思って早めに来たんだ」


昨日の夕食ちゃんと食べた?と問われ、新一は素直に首を横に振った。
やっぱり、と笑いながら棗は新一を座らせると自分には紅茶を淹れて彼の朝食に付き合う。
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