コナン夢

□残念ながらべた惚れ
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「…よく、分かったな」


新一の言葉に棗は微笑んで、幼なじみだもん簡単な推理だよ、と茶化してみせる。
いつも自分が得意げに使っている、簡単な推理さ、という決め台詞をとられてしまい、新一は苦笑するしかない。
ほかほかと湯気を立てる朝食に手をつけると、昨日の昼以来の食事だからか箸がどんどん進んでいく。
おかわりいる?という問いにうなずいて新一にしては珍しく朝からかなりの量の食事を終えた。
時間は計ったようにちょうどいつも家を出る時間である。


「スゲーな。棗にも探偵の才能があるかも知れねーな」


新一がそう笑うと棗はキッチンで簡単な片付けをしながらその言葉を笑って否定する。
無理だよ私には、と照れたように笑うその姿に新一は、んなことねーよ、と続けたが棗は苦笑するだけだ。


「私、新一くんの行動なら推理できるけど、ドラマとか小説だと犯人もトリックも当たったことないもの」


その言葉に新一は頬が熱くなるのが分かった。
棗にしてみれば幼なじみである新一の行動は分かっている、という意味で言った言葉なのだろう。
だが、棗に対して幼なじみ以上の気持ちを持っている新一としてはその言葉を軽く受け流すことは出来ない。
想い人が自分のことを分かってくれている、というのはそれがどんな些細なことでも大きな喜びになる。


「…そ、っか」


小さな声は棗に聞こえたかどうかわからないが、それを確かめる余裕もないほど新一の心の中は沸き上がる喜びでいっぱいだった。
頬の赤さは未だに引かず、隠しきれるものではない。
新一はそれを自覚してそそくさと席を立つと棗に追いつかれないように足早に玄関へと向かい、大きく深呼吸をした。
さっきまでは緊張なんてしなかったのによぉ、とひとりごちながらも心の中で棗の名前を呼ぶ。
そのたびに鼓動は沸くように強さと速さを増して、たったひとりの相手に自分が踊らされているのを感じる。
けれどそれも悪くねえか、と苦笑すると、声に出すのに勇気の必要な、たった数文字の言葉を舌に乗せた。


「棗!行くぞっ」







>あ、良かった。置いて行かれちゃったかと思ってたよ    (バーロ、誰が置いてくかってんだよ)
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