コナン夢

□ずるいから好きです
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ーーーけど、そろそろ行かねーと間に合わないか…

新一は時計を見て内心で毒づいた。
実は新一は想い人が幼なじみという近い立場にいるため恵まれており、棗の食事やお菓子はそれこそ何度も食べたことがあった。
だからクラスの調理実習くらいしか好きな人の手作りを食べるチャンスがない、という訳ではないのだ。
それでもやはり割り切ることが出来ないのは、恋をしているせいだろうか。


「…なぁ園子。棗どこに買いに行ったかわかるか?」

「え?うーんわかんない。多分自販機だとは思うけど」

「だよなぁ…」


はぁ、と新一がため息を吐くと園子はなんで?と興味津々に乗り出してきた。
素直に話すのは癪だったらしく新一はいや、と言葉を濁したが、棗の親友である園子には新一の気持ちはバレバレだったらしい。
園子はにやりと笑ってから、ハイヨ、とラッピングされたお菓子を差し出した。
それは棗の机に置かれていた調理実習のお菓子そのもので、新一は目を丸くして園子を見つめ返した。


「自分の分だって言ってたから、貰ってっちゃいなよ」

「ハァ?!なっなんで、」

「大丈夫だって。工藤くんだって棗の手作りお菓子、他の男共なんかにみすみす渡したくないでしょ?」

「…っ」


思い切り図星を指されて新一は頬を赤くした。
バーロ、んなんじゃ…という否定の言葉は弱々しく、ならいらないの?と問うた園子の言葉に新一の瞳が揺らめく。
羞恥で赤く染まった頬のまま、チラリチラリと視線が何度かお菓子と床を往復し、そしてゆっくりと彼の手が伸びた。
やっぱり欲しいんじゃない、という言葉を園子はどうにか飲み込むと、恐る恐るといった風に伸びてくる新一の指を待ち続ける。
そしてようやく新一の手に握られたラッピングはかすかな音を立てて、彼のてのひらにおさまった。
棗が作ったマフィンとクッキーを見つめる新一の瞳の中にありありと喜びの炎が灯っているのを見て、園子は苦笑すら出来なかった。

ーーーまぁったく、早く告白しちゃえばいいのに!

園子は内心で新一を怒鳴りつけたが、目の前で嬉しそうに瞳を輝かせている新一に実際には何も言うことが出来なかった。

***
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