コナン夢

□バカ、意識しすぎ
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昼休みに入ってすぐ、棗は廊下を歩いていた教師に声をかけられた。
それは次の世界史の授業で使う地図と副教材を持ってきてくれないか、という頼みだった。
棗はふたつ返事でそれを了承して、ちょうど他の友人と話し込んでいた園子に簡単な断りを入れて席を立った。
ついていこうか?と問うた園子に大丈夫だよありがとう、と返すと、棗は手を振って教室を出た。
準備室は廊下の奥にあり、昼休みといえど人はほとんどいなかった。
ざわめきが遠くなり静まりかえった廊下を少しだけ怖がりながらも棗は準備室のドアを開けて、言われた物を探し始めた。
だが、意外にもすぐに見つかるだろうと高をくくっていた地図が見つからない。
日本地図や違う時代を示す地図なら見つかったのだが、今日の授業で使うのはヨーロッパが拡大されているものだ。


「あれー?おかしいなぁ…」


静寂にたえかねたのか、それともただ口から滑り出てしまったのか。
棗は少々大きな声で独り言を呟いて、あたりを見回す。
と、ようやくそれらしい巻物状のものが目に入り、棗はホッとしたように息をついた。
だがそれは随分と高い棚にしまわれていた。

ーーーあと確認してないのはあれだけだし…。きっとあれだよね

棗は窓際にあった椅子を持ち出し、その棚の前においた。
そして上履きを脱ぐとその椅子に上がり、地図を引き抜き始めた。
けれどその地図は一メートル近い長さがあり、しかも意外と重たかった。


「…っと、」


ようやく地図の半分ほどを引き抜くことが出来、それを抱え込むように抱き留める。
重心が下がったことであとは勝手に降りてくるだろうと思っていたのだが、なにかが引っかかっているのか、すんなりとは降りてこない。
ガタガタと棚にある箱が揺れて、棗は地図を無理矢理に引き抜くのを諦めた。
そして棚のなにかに引っかかっているだろう頭の部分に手を伸ばそうとしたとき、ガラリと扉が開いた。


「おーい、棗ー?」


棗がドア口に立つ影を振り返った途端、靴下が滑って片足が宙に浮いた。
え、と思った瞬間にも身体は大きく揺れ、バランスを崩した身体は頭に重心を置いてしまった。

ーーーダメ、転ぶ…っ!

幼い頃からずっと合気道を続けている棗は数秒後の自分の姿が瞬時に想像できた。
転ぶ際や受け身をとるときは、なによりもまず頭を庇うことが大切だ。
だというのに自分は今、頭から転ぼうとしている。
それが危険だと言うことは充分分かっていても棗の身体は徐々に重力に引かれていく。
スローモーションで流れていく景色が妙に非現実的で、棗は恐怖から歯を食いしばって目を瞑った。
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