コナン夢

□終わらない恋になれ
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教室に帰って席に戻った棗は強い視線を感じて振り返った。
けれど見渡してもその視線の持ち主は分からず、棗は首をかしげた。


「おかえり〜棗」

「ただいま、園子ちゃん」


棗は適当な理由をつけて昼休みの一部を抜け出したのだが、園子にはその空白の時間を特に気にした様子はなかった。
昨日の放課後、長い時間を掛けて胸の奥に宿る気持ちに名前を付けた棗。
その課程をずっと聞いていた園子は新一の言ったとおり話を遮ったり憶測で結論へ飛びついたりせず、上手に相づちを打って先を促した。
そしてようやく棗の中で答えが出てそれを言葉に乗せたとき、園子はそっか、とだけ言って笑った。
長い時間拘束してしまったというのに園子は嫌な顔ひとつせず、棗は親友のありがたみを今更ながら感じたものだ。


「あーあ、もうすぐ卒業かぁ〜」

「卒業、だね。…さみしいな」

「そぉ?メンツはほとんど変わんないじゃない。内部生に良い男は少ないからあとは外部生に期待するしかないかな〜」


ふくれっ面で愚痴る園子をなだめながら、棗は楽しそうに笑っている。
新一への気持ちに答えを出したことでスッキリしたようで、笑顔にも心にも余裕が見える。
その笑顔の違いに新一は朝から気がついていたのだが特にそれに触れることなく今日を過ごしていた。
だが、今更になって新一は棗に視線を向けていた。
実は教室に帰ってきた途端に感じた強い視線も新一のものだ。
真っ直ぐに棗の背中に突き刺さる視線は聞きたいことがあると言わんばかりのものだが、棗が振り向く度新一は視線を反らす。
気付いて欲しそうに背中を見つめているのに、本当に気付かれるのは都合が悪いらしい。
新一は机に伏せる体勢をとりながら、腕の隙間から棗に視線を向ける。

ーーー告白を断ったときのセリフ…、"好きな人がいる"って一体誰のことだ…?

彼は飲み物を買った帰りに偶然にも棗の告白の一部始終を聞いてしまっていた。
その真っ直ぐでぶれない瞳の様子から、断りのセリフが嘘だったとは到底思えない。
棗は嘘がつけないタイプなので正直な気持ちで断りを入れたのだろう。
片思いをしている新一の身としては棗が誰とも付き合っていないことと共に、その素直さが嬉しかった。
だが手放しに喜ぶことが出来ない理由がある。
それは断りのセリフの内容だ。
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