コナン夢

□今からきみに告白します
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棗が教室に戻ってみるとそこにはまだ半分近いクラスメイトが残っていた。
クラスでの卒業パーティーのようなものがあるので、それまでの時間を潰しているのだ。
あとの半数はもう会場にいるのかゲームセンターやカラオケにでもいるのかも知れない。
教室には園子の姿があって帰ってきた棗を手を振って出迎えてくれた。


「おかえりー、棗。あんたどこ行ってたの?」

「え?…うん…と、…」

「…ああ、わかった。言わなくていいわ」


気まずそうに視線を反らし、言い淀むその姿は過去に何度か見たものだった。
今回は卒業式の後なので噂になるのは遅いだろうが、女子特有のネットワークは素早くて正確だ。
”○○くん、告白したけど振られちゃったんだって”という情報が出回るのも時間の問題だろう。
振った相手の名前が挙がることはないが、その相手は言わずもがな、である。

ーーー本当にわかりやすいんだから

棗の素直さに苦笑しながら園子はふとグラウンドへ視線を向けた。
するとそこには新一の姿があり、制服だというのにサッカーをしているではないか。
全くなにしてんだか、と呆れていると棗がキョロリとあちこちを見渡している。


「どうかしたの?」

「あ、園子ちゃん。新一くん知らない?」

「工藤くん?なんで?」

「うん…、ちょっと…」


珍しく新一関係で言い淀んだ棗に驚きながら、園子は小さく息をついた。
待ち合わせでもしてんのかしら?と当たりをつけて、棗にグラウンドでミニゲームをしている新一を指さした。


「工藤くんなら下にいるよ。ほら、サッカーしてる」

「あ…、本当だ。しかも制服…」

「いっくら最後だからって制服でサッカーしなくても良いのにね。泥だらけなんじゃない?」

「そうかも。…でも、やっぱり楽しそうだなぁ…」


窓から見下ろす新一は、ボールを真剣に追いかけて瞳はキラキラと輝いていた。
これが生命の輝きとでも言うのだろうか。
時には笑顔で、時には真剣な表情で、時には悔しそうに、ボールを追いかけている姿は一瞬一瞬が眩しく、美しい。


「格好いい、な…」


棗がポツリと呟いた言葉に園子は愛おしささえ感じた。
その柔らかな声色には、言葉には出来ないけれどたくさんの感情が詰まっているのだろう。
お互いにお互いを想い合っているふたりは、もういつ結ばれてもおかしくない。
出来るのなら今すぐにでも心を通じ合わせて春休みを満喫して貰いたいものだ。


「ね、工藤くんのところ行こうか」

「え?」

「工藤くんサッカーに夢中だからさ、おどろかしてやろうよ」


不敵に笑う園子に腕を取られる形で引き摺られ、棗はグラウンドへ降りることになってしまった。

***
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