コナン夢

□指先から恋が始まる
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棗はドキドキとうるさい心臓を感じながらゆっくりと手を伸ばした。
ソロソロと恐る恐る重ねられるてのひらに、新一は嬉しさがこみ上げる。
小学校に上がってから、ほとんどこの両手が重なることなどなかった。
幼い頃はいつでも当たり前のように繋げていた手が、いつの間に離れたのかなんて考えては落ち込んで。
いつか、また昔のように手を繋げられたら、なんて今日の朝まで想っていたのに。
今はもう、この手を離さないでいいという証を貰っているのだ。
ふわりと重なったてのひらから、じんわりとぬくもりを感じた。
皮膚が擦れ、あたたかさと緊張故の指の冷たさを直に感じて、新一は目蓋を伏せた。
目蓋を開けると手を繋いだ棗が恥ずかしそうに、でも嬉しそうにそして誇らしそうに笑っている。

ーーーあぁ、好きだ

恥ずかしいだとか嬉しいだとか緊張だとか小さな不安だとかがない交ぜになって心を襲う。
けれどそれらすべてを飲み込む感情が、愛なのだ。


「好きだぜ、棗」


そう言葉に乗せると、棗は赤くなって恥ずかしそうに俯いた。
しかしよくよく耳をそばだてれば、私も、と小さく返してくれる棗が愛おしい。
震えそうになる指、緊張のせいで汗ばみそうなてのひら、だけどどうしても棗のぬくもりを感じたい。
こんな浅はかな欲望にどうか棗が気がつきませんように。
新一はそう祈りながら、家路をゆっくりとしたペースで帰るのだった。







>少しでも長い時間君と居たいから、今日はゆっくりと歩くよ
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