コナン夢

□甘酸っぱい嘘つき
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付き合いだしてから、少し経ったある日のこと。
新一と棗はふたりして大きめの公園に行くことになった。
しかしこれはデートではなく、その公園で古書市が行われるので、そのボランティアをするというだけだった。
本来ならば町内会のボランティアがいるのだが人数が足りないと言うことでふたりも参加ことになったのだ。

古書市が始まってまだ一時間も経っていないが、市は盛況だった。
子供用の絵本から洋書や古書まで扱う市は掘り出し物も多いし、なによりも値段が安い。
新一も何冊か本を買ったのだが、店番中に読まないようにと棗に預かってもらっている。
ふたりは同じテントで絵本や児童向けの本を扱っていた。
そうしなければ無類の本好きである新一が本を読みふけってしまいちゃんと店番が出来ないのだ。
と、お母さん方と子どもが絵本選びに夢中なとき、なぜかザワリと空気がざわついた。
ふたりが不思議そうにあたりを見回すと他のテントに外国人から話しかけられている人がいるではないか。
話しかけられている相手はアワアワと身振り手振りで英語が話せないことを伝えようとしているが、どうやら伝わっていないらしい。
こちらのテントまで聞こえた、アイキャントスピークイングリッシュ!の声に棗はぱちくりと瞳を瞬かせた。


「棗、行こう」

「え?」

「すみません、ちょっとここのテントお願いします」


新一は隣のテントの店番にそう言うが早く、棗の手を取って外国人がいるテントへと足を向けた。
棗は手を引かれるまま新一の背中を追う。
近づいてみると件の彼は百八十センチ以上ある体格の良い男性だったので棗は一種の威圧感を感じてしまった。
だが新一はそれを特に気にすることなく、フレンドリーに話しかけた。


「Was something wrong?」(どうかしましたか?)

「Can you speak English?」(君は英語が話せるのかい?)

「Yes」(ええ)

「It was good」(よかった)


新一が英語で話しかけると彼はホッとしたように表情を緩め、ぺらぺらと話し始める。
新一の横で棗もその英語を聞いているが、単語単語は聞き取れてもその単語を訳している間に次へと話が進んでいる。
中学校で習ったはずの単語も何度か出てきたのだが、ちゃんと聞き取れて正確に訳すことが出来たのはbookという単語と少しの定型文の形だけだった。
新一は店番の人に彼が探している本の種類を教え、鮮やかに通訳をして見せた。
その頭の回転の速さと横顔がとても格好良くて、棗はぼうっと新一を見つめていた。
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