夢
□過去の英知が復活する前に
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「あの、ムスカさん?」
ナツメがドアをノックして返事を待つ。
すると間をおかずに返事が返された。
ナツメはその声の柔らかさに微笑み、部屋に入った。
「どうかしましたか?ナツメ」
ムスカは何枚かの書類が置かれた机に向かっていたらしい。
椅子から立ち上がるとナツメに椅子を勧めた。
ナツメは会釈を返し、椅子に座る。
格好だけは男のようだが(なにしろ軍服を着ているため)仕草は女そのものだ。
「いえ、その、…この頃ムスカさんとはすれ違いばかりだったので」
「そうですね、私もナツメも忙しかったので」
実はそうではない。
ムスカが忙しかったのは本当であるが、ナツメと会う時間が取れない程ではなかった。
だがムスカを敵視する将軍が何かとつけてムスカに雑用を押しつけ
ナツメから遠ざけていたのだった。
もちろんそれが愛する娘にばれないようにナツメも動き回らせていたのだが。
「こうやってお話しできるのも、ずいぶん久しぶりな気がしますわ」
「えぇ、そうですね。…お元気でしたか?」
ムスカの冗談にナツメは微笑む。
ムスカはナツメの笑みを見て、自身も嬉しそうに笑んだ。
穏やかに流れる時間。
特に話すことをするわけでも、何かをするわけでもない。
だが二人にとってはこの時間がとても重要で幸せだった。
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