□秘め事
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と、控えめなノックの音が聞こえた。
ムスカなのでは、と淡い期待を込めてドアを開ける。
だがそこに立っていたのはムスカではなく、ムスカの側近の黒眼鏡だった。
彼は口数少なくナツメと話すと、彼女の部屋に入り込んだ。
そして目当ては一つというように備え付けられたベッドに歩み寄る。

「…あの?」

「お気になさらず。…ムスカ大佐にお会いする準備をいたしていてください」

「…えっ?」

「将軍がドアから覗いてもナツメ様が寝ているように見える様に、少々細工を」

そう言って黒眼鏡は手早く人の形に丸めた毛布を布団の中に入れていく。
人が寝ているように盛り上がった形は、遠目で見れば気づかれないだろう。
ナツメはそれを見ながら鏡で髪を手ぐしで整え、服の埃を払う。
そして細工をしている黒眼鏡に向き直ると、彼も細工を終えたのかナツメを待っていた。
そして少しだけ笑いあって、そっと部屋を抜け出した。


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