□飛行石の光と、笑顔の輝き
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ムスカ・将軍に連れられ、ナツメは操縦桿室へと足を踏み入れた。
制服と帽子を身につけたよく知った格好の人達とは別に、頭巾を被ったような人達が席に着いている。
何を表すのか見当すらつかない目盛り。
たくさんの操縦桿。
中央に据えられているのは羅針盤と光を放つ何か。

「ナツメさん。これが飛行石です」

「…ひこう、せき…」

澄み切った空の色のように美しいその光から目を離せず、ナツメは呆然とムスカの言葉を繰り返す。
石から放たれる淡い光は道を示すように一点を指している。
その光は何を指すのかと聞こうとしたとき、それを心得ているかのようにムスカが続けた。

「この聖なる光はラピュタへの道を示しているのです」

「お話ししてくださった…あの?」

「ええ。この光が我々をその王国へ導いてくれるのですよ」

ムスカの嬉しそうな声に自然と笑みがこぼれる。
とても美しい光。
その光が自分たちを見たことのない世界へ導いてくれる。
それはまるで幼い頃母に聞かされた物語のようだ。

「どんな王国なのかしら…」

ナツメは小さくポツリと呟く。
その声を聞いて将軍は首をかしげた。
パーティーなど華やかな場面でさして興味を見せない娘が珍しく積極的なのだ。

「そんなに気になるのか?」

将軍の問いかけにナツメは当たり前だというように頷く。
そして羅針盤と飛行石を覆うように被せられたガラスに触れた。

「ええ。だってお父様、とても素敵なんですもの!
 古文書に光る石、その光に導かれて王国への道が開かれるなんて、
 一つ一つが神秘的で、物語のよう…。そう思いません?お父様」

「ナツメはそう言った物語が好きだったな」

「ふふっ…。いつも寝る前にお母様に読んで貰っていた本でドキドキして眠れなかったり、
 お父様の武勇伝をたくさん聞いて育ってきましたもの。大好きです」

ナツメが笑って、また飛行石の光を見る。
彼女は気づいていないようだが、先ほどまでピリピリとした空気を発していた将軍が、
目に見えて優しい空気を纏いだした。
それは可愛い娘の懐かしい思い出のおかげか、柔らかい笑みのおかげか。
どちらにせよ敵対していたムスカはともかく、部屋にいた兵達はその和んだ空気に肩をなで下ろす。
ただでさえ最高責任者や上官が同じ部屋にいると言うだけで緊張するのに
先ほどまでは本当に落ち着いて息を吸うことすら出来ない程のひどい空気だったのだ。


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