□それぞれの夜明け
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将軍の笑顔は目に見えて引きつっていた。
彼の前を行くのは、愛しい自分の娘といけ好かない特務の青二才。
しかも2人は周囲に仲の良さを見せつけようとでもするように笑顔で、しかも声まで弾ませている。
のけ者にされた自分は2人の後ろを歩くほかなく、苛立ちは募っていく。
娘を奪われたことも、プライドを傷つけられたことも、腹立たしい。

「特務の青二才が……っ!」

これ以上ないという程に憎しみを込めた一言も、2人のはしゃぐ声にはじき返される。
自分の不機嫌さは顔を見ればわかるだろうに、兵の誰もムスカに楯突かない。
むしろ見てはならないものを見たとでも言うように自分たちから視線を逸らしてしまう。
忌々しさに舌打ちをしても、ナツメは全く気がつかない。

「…!それは本当なんですか?ムスカさんっ」

「えぇ、もちろんですよ。ラピュタは空に浮く、素晴らしい王国なのです」

「空、、に浮いている、のですか…?」

「ラピュタはかつて恐るべき科学力で空にあり、全地上を支配した恐怖の帝国だったのです」

「…怖い、ですね……」

ナツメが小さく呟いて、目を伏せる。
その色香に胸を高鳴らせつつも、ムスカは歩みを止めない。
将軍はそんな様子を目の前で見せつけられてますます腹立たしさを募らせた。
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