夢
□天上の歌
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仁王は夢から覚めたことを少し後悔した。
だが先ほどまで聞こえていた歌のおかげで、気分がいい。
夢の中にまで現れた昨日の歌声。
あるときは耳元で囁くように歌い、あるときは全世界に響かせるように歌い、そして何度も彼だけのために歌ってくれた。
だが歌声が聞けた以上に、彼を歓喜させたことがあった。
それはその声が歌い上げるように「雅治」と呼んでくれたこと。
夢の中とはいえ名前を呼んでくれた。
ただそれだけのことが、仁王にとって震えるほど嬉しかった。
ーーー夢の中でこれなんじゃ。現実で呼ばれたらどうなるんか…
仁王はそれを思って苦笑すると、ようやくベッドから降りる。
けれども夢の中で聞いた声はそのまま頭にこびりついているようで、足取りは軽かった。