□試練
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火曜日。
仁王は機嫌を良くして学校へ姿を見せた。
だがまた同じように群がってきた女たちで機嫌を損ね、木曜日にその中学へと足を向けた。
だが待てど暮らせどその日の春間中学から彼女の声が聞こえることはなかった。
おそらく休みだったのだろう、と予想はついたのだがそれとは関係なしに苛立ちは増していく。
夕食を作るのも面倒だったようで適当なコンビニ弁当で済ませようとコンビニに向かう。
するとそこで仁王狙いの女に会ってしまい、うちに食べに来てよ、と絡まれる始末。
ストレスをぶつけるように手酷く追い返したが、増した苛立ちは腹の中で煮えくりかえっている。


「チッ」


その日の仁王の舌打ちは誰に聞かれることもなかったが、次の日は違った。
目があっただけで人を怖がらせることができるだろう視線。
遠くからでもわかる負のオーラ。
仁王の機嫌の悪さは最高潮に達していた。
いつもならばテニス部のメンバーたちが尽力してそれを抑えるのだが、パートナーであった柳生が声をかけただけでにらまれたことから、その作戦は無意味を意味していた。
幸村が脅しに近い言葉で抑圧することもできるだろうが、それは逆効果になりかねない。
その日の仁王にはほとんど誰も近寄らず、クラスは終始静かだったという。

仁王はそれから月曜と金曜は必ずその歌と声を聴きに行くようになった。
もちろんいつでも暇ではないため、ひどい時は5分も時間はなかった。
けれどワンフレーズだけでも聴けば、仁王の心は落ち着くことができる。
麻薬のようなその声に、仁王はどんどんはまっていった。
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