夢
□友人たち
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「仁王君、君がそこまで落ち込んでいるのはとても珍しいじゃありませんか。
テニスで負けた時もそこまでひどく落ち込むことは…」
「…テニスと同じくらい、大切なことだったんじゃ」
「テニスと、同じ…?」
「だから…。あきらめがつかん」
「仁王君……」
弱り切った仁王が見せた、僅かな本心。
それは幸村たちにとって衝撃的なことだった。
いつだって本気になりすぎることはなく、どこかで力や心をセーブしていた仁王。
人のことをよく観察してペテンに掛けるために数歩退いた場所から動くことはなかった。
それなのに。
大切なものを手に入れ損なった。
それは仁王にとって決定的なダメージになったのだろう。
「…もう、遅いのですか?」
「……わからん。ただ、遠くに行ってしもうた…。やっと…手に入れられると思ったんじゃが…」
今、幸村や柳生たちの前で肩を落とす彼は、どこにでもいる中学3年生だった。
いつでも大人のように振る舞っていた仁王はそこにはおらず、今の状況の打破ができないひとりの男。
幸村たちは顔を見合わせて、彼のために動くことを強く誓った。
***