□願いはひとつ
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仁王はその日も虚ろな目で生活をして、周囲を心配させていた。
放課後になって重い身体を引きずるようにして廊下に出た時、後ろから聞き慣れた声に呼び止められた。
そこには元部長である幸村が立っており、その手にはなにやらプリントが握られていた。

「…練習試合?」

「そう。3年が抜けたことで弱体化した立海を強くするために公立私立関係なく、申し込みがあった学校と練習試合を行おうと思ってね」

「それにわしらも参加しろ、ってことかのう?」

「そうじゃないよ。それじゃ意味がないだろう?俺たちは見学。ただ、頼まれれば試合もするけどね」

「面倒くさそうじゃの…」

「まあそう言わないで。はい、決まってる学校のリスト」


幸村は1枚の紙を置いてにこやかにその場を去っていった。
他の元レギュラーたちにも伝えに行くのだろう。
仁王はその紙のリストを流し読みしていったが、その中には青春学園の名前や氷帝の名前はなかった。
だが、見覚えのある学校名がひとつだけ。


「…春間中も参加するんじゃのぅ…」


仁王は無意識に印刷されたその文字をなぞる。
だが留意点を読んでいくと"公立校の場合は立海にて練習試合を開催"とある。
それは設備やコートの面の数を考えてのことなのだろうが、もしかしたら声の主と知り合えるチャンスかも知れない、と一瞬意気込んだ仁王にとって肩すかしになってしまった。
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