COWBOY BEBOP夢(完結)
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楽しめないいたずらっ子
「…ねぇ、ヴィンセント。それって何?」
「……ソリタリアは挟んだ球を一つずつ消していく
そして最後に一つだけ残せば勝ちだ」
簡潔な説明だった。
…ヴィンセントは、こう言う人だった。
ここにいるはずなのに全然違う所にいる人で
傍にいるはずなのにものすごく遠くにいて、
触られることと真っ直ぐ見つめられることをとても怖がる。
自分に近づくなというオーラを出しておきながら
ひとりにしておいたら誰にも気づかれずにいつの間にか倒れて死んでそうな人だった。
全然弱くないくせにとても弱くて脆くて、悲しい人だ。
私は傍にいても何も出来ない。
それを彼が遠い目をする度に、胸の痛みと共に文字通り、痛感させられる。
「私もやりたい」
そう言うとソリタリアをやっていた彼はちらりと上目遣いに私を見て
そして球をセットし始めた。
「え?!」
ヴィンセントのゲームを中断させてまでやるつもりはなかったから
私は彼が当たり前にセットをし初めて大声を上げた。
ヴィンセントはセットをし終わるとソファに移った。
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