COWBOY BEBOP夢(完結)

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家に突撃だ!



ヴィンセントが、部屋を移るように言ってきた。
とりあえず隣の部屋にいろと言われて頷くと、ソリタリアの球とナイフを渡される。
ソリタリアの球は受け取れたけど、ナイフは怖くて受け取れなくて。
でも、ナツメ、といつもより低い声で呼ばれて震える手にナイフを押しつけられた。


「少しの間だけだ。…これを持って、カギを掛けて待ってろ」


何があっても耳を塞いでおけ。
耳打ちすると、その大きな手で私の耳を塞いだ。
近くなった顔。
そのままジッと見つめてから、キスを仕掛けた。
ヴィンセントはそのキスに答えてくれて、舌に少しだけ八重歯を立てると
同じように八重歯を立てられて、後頭部と腰に手を回された。
唾液のついた唇を舐められてから、ヴィンセントはゆっくり離れていく。


「…カギを、掛けて…耳を塞いで、待ってる」


ヴィンセントの胸に軽く頭突きするように頭をぶつけてから、部屋を立ち去った。
部屋はなんにもなかった。
ソファも椅子もテーブルも、なにもない。
…ヴィンセントもいない。


「…すごい、寂しがりみたいだ」


いつの間にか、ヴィンセントがいないとダメになっていた。
待っている間は良いんだ。
だって帰ってきてくれるから。
でも、いつか帰ってこない日が来るかもしれない。
いつか、私が帰ってしまう日が来るかもしれない。


「……ヴィンセントが好き…」


好き、…好きだ。
どんなに言っても届かない気がする。
どんなに言っても離れていく気がする。

ひとりの部屋でも時間は経っていく。
もうお昼は過ぎただろうと勝手に予測してご飯を食べる。
今日のデザートはシナモンたっぷりのドーナツ。
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