COWBOY BEBOP夢(完結)

□21
2ページ/3ページ

コツコツとリズム良く廊下が鳴る。
それが足音だと気づいて、聞こえないだろうに息を殺した。
足音は私のいる部屋を過ぎて、すぐに止まった。
ヴィンセントに用のある足音だった。

私は隣の部屋から少しでも逃げるように、逆隣の壁に向かい合う。
足が震えてるのに気がついてしゃがみ込む。
壁に向かってしゃがみ込んで、耳を塞いだ女。
…誰かがこの格好を見たらどう思うんだろう。

くぐもって聞こえる音達。
でも少し高い強い音が聞こえて、それが銃声だと気づいた。
震えてくる身体をもっとぎゅうっと縮こまらせて、目もギュッとつむる。
頭の中でヴィンセントの声と顔だけを思い出す。



ナツメ、と呼ぶ低い声。
無表情だけど、私を優しく見てくれる目。
大きくて、温度の低い掌。
キスするときに当たる髭。

……ヴィンセントに会いたい。


そんな気持ちが込み上げて、立ち上がろうと耳から手を離す。
と、今度はヒールで廊下を走る音。そしてさっきより高い音での発砲。

ヴィンセント…?

怖くなってドアにへばりつく。
耳を押し当てて廊下の音を聞くけど、様子はわからない。
どうすればいいのかわからなくて、だけど待っていなきゃと思って。



「……ナツメ」


ノックがして、カギを開けてドアを一気に開ける。
ドアの向こうに立っていたのはヴィンセント。

抱きつこうと飛び出すと、ヴィンセントの右手から血が流れていた。
ぎょっとして、バッと効果音の聞こえそうな勢いでヴィンセントを見上げる。
ヴィンセントは相変わらずの無表情で見下ろしている。
唇にこすれるようにこびり付いた血が、視線を誘う。


「…ヴィンセント」

「大丈夫だ。…ナツメ」


呼ばれるのと同時にキスされた。
血を飲んだのか、私の時みたいに誰かに血を飲ませたのか、血の味がするキス。
唾液を飲み込むたびにコクリと喉が動く。
その音と、ピチャリと濡れた音が生々しく頭に響く。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ