COWBOY BEBOP夢(完結)
□夢から覚めるとき
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夢から覚めるとき
見上げた空から視線を戻すと、手が透け始めていた。
きっと、戻れるんだ。
最後にヴィンセントの、まだ温かい体温を感じたくて、手を握った。
握り替えしてくれないのが、悲しい。
「…ヴィンセント」
名前を呼んでも、視線も声も返ってこない。
あぁ、本当に…。
と、またあの時のようなひどい頭痛がして、私は抵抗する間もなく気を失ってしまった。
彼の手を、握ったままで。
気づくと、真っ白い天井があった。
布団も真っ白くて、次に嗅覚に訴えてくるもの。
…病院だ。
カーテンの閉められていない窓から外を見ると、帰ってきてることがわかる。
その事実に何でなのか涙が出そうになる。
帰ってこられたことが嬉しいのか、それとも帰ってきてしまったことが辛いのか。
ヴィンセントを救えなかったことが苦しいのか、最後に振られたことが痛いのか。
「ナツメさん…?」
看護師さんが声を掛けてきてくれた。
視線を動かして返事をすると、少し笑って出て行った。
きっと医者を呼びに行ってくれたんだろう。
「……ヴィン、、セント…ォ」
間抜けな位の泣き声だった。