COWBOY BEBOP夢(完結)

□過ぎ去った未来
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過ぎ去った時間は戻せない。
だけど、過ぎ去っていない未来、それが私たちにとって過去だった。


「ヴィンセント、調子は?」

「…ああ。悪くはない」

「でも良くもない、とか続く?」

「………」


ヴィンセントは私のいる時代にタイムスリップしてきた。
ずっと先の未来で本当は死んだはずの彼が、となりにいる。

撃たれた傷は塞がっていて、一度だけ見せてもらった。
映画で見る銃創と同じ形をしていたけれど、妙にリアルで怖かった。

ヴィンセントは長い間植物状態にあったのでまずは筋トレを兼ねたリハビリが必要だった。
だけど元々彼は軍人なので(これはどちらの世界でも)、身体を動かすことに慣れていたらしく
お医者さんも看護師さんも驚く位の早さでリハビリを終えた。
…一部の噂では彼女(私のことらしい)が応援してくれたおかげだという話もあるけれど…。


「…ね、ヴィンセント」


ヴィンセントは、私の硬い声に気がついて顔を上げた。
向こうでもこちらでも無表情にはかわりがない。


「……あっちのほうが、良かった…?」

「…ナツメ?」

「あっちで、…死んで、もう現実に帰ってこない方が…」


向こうで死んだ彼がこの世界に生きることは、本人とってどんな痛みを持つのだろう。
ヴィンセントは、向こうの時代で、愛する人に撃たれて死んだ。
止められなかった自分を、彼女に止めてもらった。
死をもって 夢 から目覚めたのだ。ヴィンセントは。

いつも考える。
私が勝手に彼を連れてきてしまったのだと
私が生きている時代に
彼が生きていない時代に
彼女が生きていない時代に
何もかもが違っていて、何もかもが変わっているこの世界。
この時代で、この世界で、彼は生きたいと思っているのだろうか。
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