楽
□助けてくれて、
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今よくテレビでいじめで自殺だの何だのが特集されている。今私が見ているのは、いじめについて三時間近く大人と子供が話し合うものだ。
ブラウン管の中にいる被害者の女の子が、泣きながら今までされて来たいじめの体験を語っている。
私はアイツと一緒に、ぼーっとそれを眺めていた。
あの時の私は被害者ではなく、加害者側の人間だった。私、よくあんな事してたなあ。何が楽しくてしてたんだろう。
いや、楽しいとか、楽しくないとか、そんな理由じゃなかったかもしれない。
私が高校生の頃の話。
放課後の、皆が部活に一生懸命になる時間。茜色に染まる教室で、私は何人かの友達らしき子と一緒に一人の生徒をリンチして金をせびろうとしていた。いわゆる、カツアゲというヤツだ。
『…金、出せよ』
「……………」
「持ってんだろ!黙ってねえでいいから出せや!」
上の階から吹奏楽の綺麗な演奏が聞こえてくる中、ゴン、と鈍い音がした。その一人の生徒が私の左隣にいる子に突き飛ばされて、頭を打ったのだ。
正直、この生徒が金を持っていようといまいと、どうだって良かったりする。
私達はただ、誰かをイジメタイだけなのだ。
「あー見てコイツこれだけでもう泣いてる!ダサ」
可哀相なその子は五人の同学年である私達に囲まれて、泣きながら縮こまっていた。
私達はそれを見て、楽しくて仕方がない。とてもすっきりする。しちゃいけない事をしている、という優越感。
やられている方は大変だけど、している私達にとってそれは、ただの遊びに過ぎない。
「コイツまじブスじゃない?…キモ!こっち見んなって!」
私の右隣りの子が、うずくまっているその子に黒板消しを顔に押し付けた。チョークで目一杯汚くなった黒板消しだった。
「これで汚い顔も、ちょっとはマシになったんじゃない?」
あはは、と、皆で黒板消しのチョークの粉で顔が真っ白になった生徒を笑う。
その生徒から大粒の涙が零れていても、私達は別に気にとめなかった。
教室が、渇いた笑い声に支配された。まるで、壁を黒いペンキでイタズラされたように、何か汚い物でいっぱいになったような気がした。
でも、その時私は、足りない。そう思った。
これだけじゃ、面白くないじゃない。
「え、それはちょっと止めた方がいいんじゃない?」
「そうだよやばいよ!」
「いいんじゃない面白そうだし」
周りの声を無視して、側にあったほうきをガシッと掴むと生徒に向かってそれを振り上げた。
その時だった。