けだるい
□午前2時58分の会話
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『銀さん、』
『銀さん』
『…銀さ』
「んー…?…どうした」
銀さんの閉じていた瞼が眠そうにゆっくりと開いて、やはりとても眠そうな声が、私の頭に降ってきた。
『あのね、』
「……おお」
『眠れないの』
「………そう、か」
銀さんは眠いからだろうか、それとも私よりも上の位置に銀さんの頭があるからだろうか。声はいつもよりかも重くなって、私の頭へ降って来た。
今は一体何時なのだろうか。窓の隙間から僅かに差し込んで来る月明かりの光りは、ほんの少しだけなのだけれど、この暗い部屋いっぱいを照らした。本当は黒いはずのこの部屋は、そのせいで暗い青に変わり、そのことは、もしかしたらもう朝なのではないかと私の心を静かに急かした。
『眠れないの』
「…そうか」
私を抱きしめる腕の力が強くなった。距離が近くなる。だから私も腕を回している力をぎゅっと強くして、銀さんの胸に顔をくっつけた。
「…窒息すんぞ」
『しないもん』
自分のくぐもった声が、銀さんの胸に響いて、じんじんという音と共に耳の中で聞こえてきた。
「顔、くっつけすぎ」
頭がずしっと重くなった。そしてポンポンとリズムを付けて軽く叩かれる。どうやら私は銀さんにあやされているらしい。
『…ごめんね、銀さん』
「はいはい」
『…銀さん』
「おお」
『………銀さん、』
「…………」
「……最後まで言ってから寝ろよ」
青いなと思っていた部屋は、いつの間にかまた真っ暗になって、銀さんがとっても優しくて、あったかくて。何か嬉しかった。
もうここから記憶はない。どうやらここで私は寝たらしい。
あと、何となく覚えていることと言えば、頭から降って来たおやすみ、という言葉と、頬に当たった柔らかな感触だけだ。
午前2時58分の会話(…幸せだなあ)