けだるい   

□午前2時58分の会話
1ページ/2ページ

    
『銀さん、』

『銀さん』

『…銀さ』

「んー…?…どうした」


銀さんの閉じていた瞼が眠そうにゆっくりと開いて、やはりとても眠そうな声が、私の頭に降ってきた。


『あのね、』

「……おお」

『眠れないの』

「………そう、か」


銀さんは眠いからだろうか、それとも私よりも上の位置に銀さんの頭があるからだろうか。声はいつもよりかも重くなって、私の頭へ降って来た。

今は一体何時なのだろうか。窓の隙間から僅かに差し込んで来る月明かりの光りは、ほんの少しだけなのだけれど、この暗い部屋いっぱいを照らした。本当は黒いはずのこの部屋は、そのせいで暗い青に変わり、そのことは、もしかしたらもう朝なのではないかと私の心を静かに急かした。


『眠れないの』

「…そうか」


私を抱きしめる腕の力が強くなった。距離が近くなる。だから私も腕を回している力をぎゅっと強くして、銀さんの胸に顔をくっつけた。


「…窒息すんぞ」

『しないもん』


自分のくぐもった声が、銀さんの胸に響いて、じんじんという音と共に耳の中で聞こえてきた。


「顔、くっつけすぎ」


頭がずしっと重くなった。そしてポンポンとリズムを付けて軽く叩かれる。どうやら私は銀さんにあやされているらしい。


『…ごめんね、銀さん』

「はいはい」

『…銀さん』

「おお」

『………銀さん、』

「…………」

「……最後まで言ってから寝ろよ」


青いなと思っていた部屋は、いつの間にかまた真っ暗になって、銀さんがとっても優しくて、あったかくて。何か嬉しかった。

もうここから記憶はない。どうやらここで私は寝たらしい。
あと、何となく覚えていることと言えば、頭から降って来たおやすみ、という言葉と、頬に当たった柔らかな感触だけだ。



午前2時58分の会話(…幸せだなあ)


 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ