何度それを手に入れようともがいた事か、だがそれも無駄なあがきだったという事か。





静かに風が私の頬を掠める。私は一体どれ位の間あの幸せを望み続けていたのだろうか、もうわからない位だった。そしてそれを諦めようとしている今だって頭の中はそれでいっぱいだ。いつも私は彼を求めている。

全く私は愚かな人間だと思う。一人の人間にこんなに振り回されてしまうなんて。馬鹿馬鹿しい。


貴方は知らないでしょうね。私がどれだけ貴方を想っているかなんて。貴方の隣にいるあの子になってみたい。貴方の傍でずっと幸せな夢を見続けていたい。
それに彼の隣に相応しいのはあの子じゃなくて、私。きっといつか彼は気付いてくれる。そう心の隅っこで信じていた。



でも、あの子を見た時思った。彼の隣に相応しいのは私なんかじゃなかった。あの子の白い肌や、大きくて可愛いらしい目、笑った時に出来るえくぼや、つやつやした長い髪、ふっくらした唇。私が持っていない物全てをあの子は持っていた。

そしてその時にやっと気付いた。ああ、彼の隣はあの子しか居ないんだ。
あの子はとても可愛いかった。私はただ茫然とそこにいる彼女を眺める事しか出来なかった。




彼は、私を求めてはくれない。これからも、きっとそう。彼はあの子だけを大切にしていくだろう。





彼があの子に早く振られればいい、なんて考える自分が嫌い。

でもあの子の隣で幸せそうに笑う彼の姿なんて考えたくもない。

私は一人で毎晩泣き喚いた。私は彼が良かった。彼じゃなきゃ、駄目だ。

彼じゃなきゃ、










その時から私は無意識に空に向かって手を伸ばす様になった。



心の隅でこんなになってもまだ私は叶う事ない幸せを望んでいるのだ。ねえ、私を迎えに来て?私に笑いかけて?


求めるように、空に向かって手を伸ばす。



その手はただただ空気を掴むばかりで、少し冷たい風が私の頬を掠めた。





(…一度だけでいい。愛してる、って言って?)











嗚呼、今日の空もとても綺麗だ。












今日の空もまた青し(いつになったら私は苦しまなくて済むようになる?)

 
 

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