短編+相互品

□ティキ
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ああ。つまらない。
美しい煌びやかなシャンデリアにも、華やかなドレスにも、買ったばかりのピアスにも、全く心踊らない。だって彼が居ないもの。このシャンパンだって美味しくない。だってお高いだけ。ティキと飲む安物の方が何万倍も素敵だってわたしは知ってる。

「今晩はお嬢様。お一人ですか?」
金色髪の毛を自慢げにかき上げ、頬にうっすらと微笑を携えた紳士が声をかけてきた。だれ。どうせ千年公に媚びを売りたい輩でしょうけど。わたし営業スマイルは得意なの。
「ご機嫌よう。ええと、あなたは…」
「エドワードと申します。以後お見知りおきを。よろしければ踊りませんか?」
「申し訳ありませんけれど、パートナーが居まして…」
「先程からお一人の所をお見受けしておりますが?」
……見てたなら回りくどい言い方しないで欲しいわ。嫌なやつ。ちょっと、なに腰に手回してるのよ。
「ちょ、も、申し訳ありませんが…」
「大丈夫。パートナーを忘れさせて差し上げます。」
「いやっ、」
「なにしてくれてんの?」
背後から聞こえてきたのは居るはずもない彼の声。間違えるはずがない。百万人の中からでも聞き分ける自信があるわ。愛しい愛しい、「ティキ!」
「ぱ、パートナーってティキ・ミック!?」
「そう。オレ」
「わ、わたくしはこれで失礼させて頂きます!」
金髪さんはみるみる顔を青くして微笑みをひきつらせ、たどたどしい足取りで去って行った。
「ティキ、仕事じゃなかったの?」
「終わらしてきた」
「あんな人数を!?」
「だって、ロードから千年公がお前連れて舞踏会行ったって連絡きてさ。お前1人で行ったら絶対ナンパされるだろ?」
「う、…ありがとう」
「なあ、2人で抜け出して俺の部屋でシャンパン飲まねえ?ここのより安物だけど。」
「ううん、それが飲みたい」
安物のシャンパンと、あとはキッチンからチーズをこっそり頂きましょう。それから、アレがあれば最高ね。


































貴方から愛してるの囁き


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