◆短編小説◆
□オマエは 俺の おまもり
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「今日一緒に寝ようぜクラウド!」
「…また?」
夕食時にうきうき声をかけると、相変わらずつれない返事が返ってきた。
「男二人で同じベッドなんてシュールだろ。ここんとこずっとじゃん。たまには一人で寝るよ俺」
「そんな事言うなよ〜。お前のためにキングサイズ買ったんだぜ」
「頼んでないし」
食器の片付けは俺がするから!とかなんとかクラウドを説き伏せ、ホッと一息つく。
別に人恋しいとか、人肌がないと眠れないとか、そんな軟弱な理由ではない。
それに別に毎日な訳じゃないからそんなにしょっちゅうクラウドに寝てくれと言わなくてもいいかなとも思うのだが…。
実はザックスには人に言えない秘密があった。
それは、霊を感じる事。
ハッキリ見える訳ではないし、見えてもぼやっとしたものがうごめく程度。
気持ちの良いものではない。
気にしなければ気にならない程度なのでそれは別段何ともないのだが、頭を悩ませるのは金縛りだ。
夜中に黒い影が自分にのしかかる、何とも言えない不快感と恐怖。
動けない体がもどかしく、そして恐ろしい。
解放された後の脱力感がまた疲れを増し、体中に嫌な汗をかいているのがこれまた不愉快極まりない。
もしかして解放されてもまだこの部屋にいて自分を見ているんじゃ?と思うと、朝まで一睡もできない事もしばしばだ。
どんなモンスターが出てこようと怯まず突っ切れる自分がなんとも情けない話だが、剣で切れないものにはやはり相応の恐怖を感じた。
(繊細な人間が見るもんだとばっかり思ってたんだけどな…)
どう見ても自分が繊細な部類に入るとは思いがたい。
そして、同室の彼こそ繊細を絵に書いたような人物の割に、自分が見えている時でも気付かずにいるところを見るとサッパリ霊感はないようだ。
この先入観は自身で霊を感じるようになって打ち砕かれた。
ソルジャーは通常個室をあてがわれるのだが、ザックスはソルジャーになってからも同室でいる事を望んだ。
別に同室の誰かに助けを求める訳ではないが、誰かが近くにいると言うだけで結構安心できた。
もしも自分が大声でもあげれば気付いてくれるかもしれない。
そんなちょっとした安心感。
だがまだそれは一度も試した訳ではないのだが。
そしてクラウドと同室になり、そこそこ仲良くなったある日、ザックスは発見する。
その日、二人は偶然次の日が休みが重なったとの事で「今夜は飲み明かそうぜ」などと笑いながらマーケットで酒や食料を買い込んでいた。
見たかったのにうっかり見る前に終わってしまった映画がDVDになっているから借りて行こうとか、そんな他愛もない話をしながら両手に荷物を抱えて部屋に戻った。
リビングで食事をしながら酒を飲み、同じDVDで笑いながら過ごした。
翌日はどうせ休みなのだからと二人とも羽目を外して飲んでいた。
ふと眼を開けると電気は煌々と付いたままでクラウドは横で眠っていた。
二人ともリビングの床にだらしなく転がっている。
ああ、つい片付けも何もせずにひっくり返っちゃったんだなぁとクラウドに手を伸ばした瞬間、それは来た。