短編


□幸村×真田(?)
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窓の外に白い雪が降り出して数日後。
どうしても外に出たいという幸村の願いを聞き、俺たちは病室を抜けて屋上に出てきた。


アスファルトを埋める白。
今は、雪がやんでいて日が出ている。
日の光が雪に反射して少しまぶしいくらいだ。


「真田、寒いねー」

「うむ・・・幸村、病室に戻るか?」

「ん・・・」


幸村は頷くが空を見上げたまま動こうとしない。
はぁ、と息を吐いては両手をこすり合わせている幸村を見ながら上着を持ってきたほうがいいかと扉に向かおうとした。


パシュ・・・


後頭部に雪の球が当てられ後ろで幸村が声を上げて笑ってる。


「アハハ!! 真田、ダサー。
ねぇ、真田。雪合戦しようよ」

「いや、しかし・・・」


ダメだと言おうとした俺の顔に再び雪の塊が・・・


ムカッ


「フフッ・・・・・・っ!?」


不適に笑っている幸村の顔に雪を当ててやる。


ムカッ


「真田・・・容赦はしないよ」

「望む所だ」


こうして、雪球の応酬が始まった。







「ハァハァ・・・ん?」


幸村からの返球が減ってきている?
どうしたのかと、幸村のほうを見れば・・・


ドサリ・・・


「幸村っ!?」


白い雪の上に倒れた幸村に急いで駆け寄る。


「幸村、幸村っ!!」


揺り動かせば、幸村の目がゆっくりと開く。


「フフッ・・・あーあ、もうムリみたいだ」

「諦めるなっ! 今医者を・・・」


グッ、と幸村が俺の服を掴み首を横に振る。
その顔は苦しいながらも無理に笑顔を作っているようだった。


「さな、だ・・・苦労を、かけたね」

「幸村、そんなことを言うな」


絶対に戻ると言ったじゃないかっ・・・
全国に間に合わすと・・・っ!!


幸村の冷えた手がオレの頬にそっと触れる。


「今まで、ありがとう・・・弦一郎」


幸村の手が重力にしたがって落ちていくのがスローモーションのように見えた。


「幸村っ! 幸村、目を開けろ・・・っ!
・・・・・・死ぬなっ、精市・・・」


冷たくなり始めた、精市の身体を抱きしめる。


せっかく俺の名前を呼んでくれたのに・・・


「精市、認めんぞ・・・あれが最初で最後だと!!
起きろ、精市っ・・・そして、もう一度オレの名を・・・・・・」


俺の瞳から涙が溢れ落ち、幸村の頬をぬらす。


どんなに揺すっても精市の紺色の瞳が開く事は無い。


どんなに呼びかけても再び俺を呼ぶ声は聞こえない。


オレはそのまま精市を抱きしめた腕に力をこめることしか出来なかった―――




fin





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