短編
□甘酒
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柳生side
今日は3月3日。
所謂雛祭りの日ですね。
雛祭りというのは、女の子のための日だと思っていたのですが・・・
「やーぎゅ、これ飲みんしゃい」
そう言って仁王君が渡してきたのは甘酒。
確かにこれは子供でも飲めるでしょう。
しかし、私はお酒にはかなり弱いのです。
アルコールの匂いを嗅ぐだけでも頭がクラクラするほどなんです。
「仁王君、申し訳ありませんが私には飲めません」
今も仁王君が持っているコップから微かに香ってくる匂いで軽く頭がぼーっとしています。
飲んでしまえば大変なことになるのは目に見えている。
「柳生、飲んでくれんのか・・・?
せっかく柳生に飲んでもらおうと持ってきたのに・・・」
シュンとした表情でこちらを見つめてくる仁王君。
うっ・・・
そんな、捨てられた子犬のような目でみないでください!
「なぁ〜、やーぎゅ。ちょっとだけでもええから」
「・・・・・・・・・はぁ、分かりました。一口だけですよ」
コップを傾けて中の液体を口に流し込む。
途端に、体がカッと熱くなる。
「に、仁王君・・・」
「悪いのぅ、やーぎゅ。それはちいとばかしアルコール濃度を上げとるんじゃ。普通の奴なら大丈夫じゃろうが、お前さんにはかなりキツいんじゃなか?」
ぼーっとする頭で仁王君を見れば、彼は口の端を吊り上げてにやりと笑っていた。
私の記憶はそこで途切れてしまった。
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