短編


□卒業
1ページ/2ページ


風が桜の花びらを舞い上がらせる。そんな桜並木を歩きながら、オレは・・・オレ達は感慨深げにそれらを見ていた。

FFIで優勝を勝ち取ってから時は屋のように過ぎ去り、オレ達は3度目の3月を向かえた。3年前には迎えられた、この雷門の門を今度はオレ達が送り出されることになる。
ちょうどさっきその証書を雷門理事長から受け取ったところだ。

「風丸、いいのか?陸上部に行かなくて」

さっきまでサッカー部には挨拶をしてきたが陸上部には勿論行っていない。

横でこちらを窺う円堂達にオレは首を横に振る。

「オレはサッカー部だ。陸上部には行けないさ」

あの日、陸上部とサッカー部とで揺れ動いていたオレは陸上を捨ててサッカーを選んだ。勿論後悔はしてないし、今のオレがいるのはサッカーのおかげだ。

しかし、後輩の宮坂には悪いことをした。最後には認めてくれたようだが、たまに陸上部が走っているところを見ると、罪悪感が湧いた。

ふと前を向くと、たった今考えていた宮坂が1人でこちらに向かって歩いてきた。

「おー、宮さっ・・・・・・」

スッと、目も合わずにすれ違う。
ちくりと胸が痛んだ気がした。

「嫌われた・・・・・・のか」

ボソリと呟いたのが聞こえたのか、サッカー部のやつらが心配そうな目で見てきた。
オレはそれに空元気で返す。

「まっ、オレは陸上やめた人間だしな。しょうがないか」

最後くらいちょっと話したかったなとか、思わないでもないがしょうがない。
オレ達が校門をくぐろうとしたとき。

「風丸先輩・・・・・・っ!!」

振り返ると、さっきは言葉を交わせなかったオレにとってかわいい後輩。


『卒業・・・・・・っ、おめでとう、ございますっ』


「ありがとう、宮坂」

ついに堰を切ったように泣き出した宮坂の頭にぽんと手をやる。アイツらは気を利かせたのか先に帰った。

オレは宮坂の背に両手を回し泣きやむまで待つと、宮坂の手にたった1つ守り抜いたものを握らせた。

「先輩っこれ・・・・・・」

「他のは取られたけど、第2だけはお前にやるよ」

宮坂はもう着ることはないだろう、前の開いた学生服にしがみついて再び涙を流した。

オレは照れてほほを掻きながら、その頭に花弁を乗せた彼を愛おしく見つめていた――・・・・・・







(先輩っ好きです・・・・・・)
(オレもだ)
(絶対、会いに来てくださいね)


→あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ