短編
□卒業
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風が桜の花びらを舞い上がらせる。そんな桜並木を歩きながら、オレは・・・オレ達は感慨深げにそれらを見ていた。
FFIで優勝を勝ち取ってから時は屋のように過ぎ去り、オレ達は3度目の3月を向かえた。3年前には迎えられた、この雷門の門を今度はオレ達が送り出されることになる。
ちょうどさっきその証書を雷門理事長から受け取ったところだ。
「風丸、いいのか?陸上部に行かなくて」
さっきまでサッカー部には挨拶をしてきたが陸上部には勿論行っていない。
横でこちらを窺う円堂達にオレは首を横に振る。
「オレはサッカー部だ。陸上部には行けないさ」
あの日、陸上部とサッカー部とで揺れ動いていたオレは陸上を捨ててサッカーを選んだ。勿論後悔はしてないし、今のオレがいるのはサッカーのおかげだ。
しかし、後輩の宮坂には悪いことをした。最後には認めてくれたようだが、たまに陸上部が走っているところを見ると、罪悪感が湧いた。
ふと前を向くと、たった今考えていた宮坂が1人でこちらに向かって歩いてきた。
「おー、宮さっ・・・・・・」
スッと、目も合わずにすれ違う。
ちくりと胸が痛んだ気がした。
「嫌われた・・・・・・のか」
ボソリと呟いたのが聞こえたのか、サッカー部のやつらが心配そうな目で見てきた。
オレはそれに空元気で返す。
「まっ、オレは陸上やめた人間だしな。しょうがないか」
最後くらいちょっと話したかったなとか、思わないでもないがしょうがない。
オレ達が校門をくぐろうとしたとき。
「風丸先輩・・・・・・っ!!」
振り返ると、さっきは言葉を交わせなかったオレにとってかわいい後輩。
『卒業・・・・・・っ、おめでとう、ございますっ』
「ありがとう、宮坂」
ついに堰を切ったように泣き出した宮坂の頭にぽんと手をやる。アイツらは気を利かせたのか先に帰った。
オレは宮坂の背に両手を回し泣きやむまで待つと、宮坂の手にたった1つ守り抜いたものを握らせた。
「先輩っこれ・・・・・・」
「他のは取られたけど、第2だけはお前にやるよ」
宮坂はもう着ることはないだろう、前の開いた学生服にしがみついて再び涙を流した。
オレは照れてほほを掻きながら、その頭に花弁を乗せた彼を愛おしく見つめていた――・・・・・・
(先輩っ好きです・・・・・・)
(オレもだ)
(絶対、会いに来てくださいね)
→あとがき