long
□a wax doll?
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人形のようだ、と言った人がいた。私を表現する一番適切な言葉らしい。ベッドの上で事が済んだ後、そう言っていた。
ただ私はそれを否定する必要を感じなかったし、その通りだと思ったから何も言うことはなかった。ただ、全身はだるく眠りたかった。
瞼を伏せる。
人形だって、疲れるのだ。
次に意識を取り戻したのは朝早く、陽も登っていないころだというのに、さっきまで隣にいて、私を人形呼ばわりした男はもういなかった。
一夜限りの関係は、いつだって呆気なく終わる。その日も今日も、そんな日常の中のなんてことない些細な一日で、だからこれは特別なことではない。
まさに今私に覆い被さっているこの男の、名前でさえ知らない。今は関係を結んでいるのに、数時間後には他人なのだ。
私は小さく声をあげて、仰け反った。そんな様子を相手は私の表情を上から見下ろすようにして、一瞬動きを止める。
「ど、したの?」