long
□a wax doll?
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不思議そうに私は問いかけてみたけれど、本当はその理由を知っていた。行為の最中だというのに表情があまりにもなくて驚いたのだろう。ない、と云ってももちろん顔の筋肉はそれなりに動くし、多少は変化するのだけれど、どうやら感情が読みとれない程度のものらしい。これも私自身ではなくその時の相手から教えてもらったことだ。
そんなことを冷静に考えていたけれど、男はすぐに動きを再開して、それから呻き声をあげた後、倒れ込むように私の横に寝そべった。
お互い息が上がっていて、喋れるような状態ではない。会話をするような話題も、そんな必要もないからちょうど良かったかもしれない。当然甘い雰囲気にもなるはずなく、互いに呼吸を整えるだけ。
「―――あの、」
私より早く回復したらしい相手が、声をあげた。
「君、泣くことはあるのですか?」
ただ私は天井だけを見つめていて、この男がどこを見ているかなんて分からなかったけど、なんとなく相手も天井を見ているような気がした。私はただ黙ったまま呼吸を整えることに専念して、初めは白い天井だったのに随分くすんだものだ、なんて考えていた。
私を抱く男たちの煙草の煙が原因だろう。