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□a wax doll?
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私には必要のない灰皿がこの部屋にはある。それを使う男のために。灰皿なんて必要ないけれど、灰皿を必要とするような男たちが私に必要なのだ。
「―――煙草、吸う?」
「、は?」
起き上がって下着を拾い上げながら、灰皿を取り出した。それをベッドのサイドテーブルに置いた私に、男は虚を突かれた声を出す。
灰皿にはまだ昨日の男の吸い殻が残っていた。昼間の内に捨てておくべきだったかもしれない。
「―――いや、僕は吸いません」
「そう。珍しい」
この男は、今までの男の二割のうちに入る。残り八割程度は喫煙者だった。
「、ごまかしているのですか?」
妙に丁寧な言葉遣いだと改めて気づく。そういえば、誠実そうな男だと思っていたのだ。さっきまで。本当に誠実なら私みたいな女を抱くようなことはしないだろうけど。私の中の何かを覗くような訝しげな視線を受けながら、
「――そうね。可能性としては、かなり低いわ」
ごまかすつもりなんて毛頭なかったから、素直に最初の質問に答えた。
「では、笑うことは?」
「ゼロに等しい」