short
□たゆたう、
2ページ/14ページ
仙人掌みたく、私はいつまでたっても、からからのまま。
だけど仕方ない。
だってそれが、彼なんだから。
彼の瞳だとか、髪、鼻、口、その襟足。そして笑み。ゆらゆらと頼りなさ気に揺れて、揺れて、私の記憶にすら留まってくれない彼。
蜃気楼。
暑い…。熱い…。
私を可笑しくさせる。
このどこまでも貫くような日差しが私に夢を見させているの?
でも、仕方ない。
私は彼を、見つけてしまったから。
巡り会って、しまったから。
「――――――…」
蜃気楼が、私の横を通過する。
生暖かい風。
彼の背中。
制服の白いシャツ。
どこにいってしまうの。
あぁ…、どうしようもなく、喉が渇く。
彼は、きっと太陽で、オアシス。
私をじりじりと焦がして、夢を見させる。
夢だとわかっていても、いつまで経ったって、目が醒めない。
するすると、彼は砂のように、風のように、そこら中から零れ落ちる。記憶から、隙間から。
どこにもいかないで…。
愛おしすぎる彼は、私の世界に、ちゃんと所属していて。