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□貴方を傷つけるのは、私だけで十分だ。(完結)
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彼が人質として有効だったのは、数年前までだろう。いや、新しい執事が来る前のファントムハイヴ家においても、その息子を人質にするのは身を滅ぼすことだったかもしれない。
今日もまた、1つの裏の組織が瞬く間に終わりを告げた。


傷つき、少し疲れた体を、執事が抱き上げた。

「主人より夕食の心配をするとは何事だ。その夕食を食べる僕が不在じゃ話にならんだろう。」

「ご安心ください、もうすぐ21時です。夕食の時間はとっくに過ぎていますよ。それより坊ちゃんは、ずいぶん長い間おやすみになっていらしたようですね。睡眠時間がずれてしまう。」

「食事の時間の次は睡眠時間の心配か。」

殴られたときに切れた唇。突き飛ばされたときにぶつけた背中。強い力で手を引かれたときの痕が残る腕。シエルの体はあちこちズキズキしていた。

「偉いですね、窓から逃げようとなさらなかったのは。いくら私が来るとわかっていても、さすがに3階から飛び降りるような真似など…勇敢な坊ちゃんなら避けて当然です。」


ファントムハイヴ家を崩壊させようと企てる輩は、後を立たない。有能な執事の噂は広がってはいるものの、執事は執事、大勢でかかればなんとでもなると思われているのだろう。
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