NOVELS LONG

□girl friend 1
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北校舎の屋上。
そこが私のお気に入り。

海でも見えれば最高だけど、生憎この町に海なんかない。
それでも、校内のあちこちにある金木犀の匂いの風を鉄柵に座って胸一杯に吸い込んで、イワシ雲眺めてると、もうすぐあの人の誕生日だ…って、切ない気持ちを飴玉舐めるみたいに楽しめる。

こういう、独りきりの時間が好き。


「やっぱここだった。」

後ろから馴染みの声。
一希の、声。

「今日、練習あるから帰っちゃダメだからね。」
「んー。」
「最後の文化祭は千尋のギターで歌うって決めてたんだから。」
「んー。…一希、授業いいの?」
「うちのクラス、自習だもん。」
「そっか。」

「…。」
「…。」


風に吹かれながら一希と過ごす、無言の時間も好き。
こういう時に一希がなに考えてんのかは知らないけど。
私はよく、初めて一希を見た時のこと、思い出す。
初めて言葉を交わした時のことも。
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