NOVELS LONG

□Call my name 2
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〈葉瑠と和津〉
 
 
游ちゃんが仕事をしてると知った日曜日。
4回の呼び出し音で受話器が上がった。
 
「もしもし。」
「和津?」
「うん。」
「葉瑠やけど。」
「お母さん仕事やで。」
 
どことなくつまらなそうに和津は言った。
 
「うん、聞いた。今日和津、予定あるん。」
「まだわからん。」
「まだ予定ないなら遊びに行こ。」
「なんで?」
 
突然なんでだと思うだろうな、やっぱり。
 
「友達やろ?和津と私。和津もおっきくなってきたしそろそろお母さん抜きで遊んでもええやん。ゲーセンでも行こうぜ。」
「ゲーセン・・・行く!」
「じゃあ迎えに行くからちょっち待ってて。」
「あ、けど僕今月のこづかい、もうないわ。」
「今回は私の奢りでええやん。」
 
游ちゃん家のマンションの前で和津を拾って近くのボーリング場へ向かった。
 
車の中では少しぎこちなかった和津も、ギターを弾くゲームで二人夢中になって遊んでいるうちに、游ちゃんが一緒にいる時のいつものテンションになり、会話もスムーズに続いた。
 
「葉瑠、すごいな。バンドやってるだけのことあるなぁ。」
「ちょっとは弾くねん。」「僕まだソロは弾けへん。」
「じゃあ今度教えるわ。」「ほんま?」
「うん。」
 
カーレース、UFOキャッチャー、ボーリング。
めいっぱい遊んだ。
会った瞬間からウマが合っていただけに、ほぼ対等に会話が交わせるほど成長した和津と過ごすのは楽しかった。
 
「そろそろ、お母さん帰ってくるんちゃうか?」
「いっつも6時半くらいに帰ってくる。」
「・・・さびしないか?」
「遊ぶ奴いいひん時はちょっと。けど、おじいちゃん家行くから。」
「そっか。じゃあ誰もおらん時は私にもかけてきぃや。練習とかライヴ入ってる時以外なら日曜はヒマしてるからさ。
これ、携帯の番号な。」
「うん!」
 
和津を送り届けた小さなマンション。
窓辺には観葉植物。
部屋は少し散らかっている。
休みの日にしか掃除できないって言ってたな。
キッチンは狭いけど使いやすそうに整理されてきれいだ。
古い机にはパソコン。
もう一つの部屋は寝室なのかドアが閉まっていた。
 
彼女の生活を初めて垣間見た。
 
 
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