パラレル

□Doll
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「リボーンさん!!」
朝から騒ぎ立てる隼人に心地の良い眠りを邪魔され、目覚めたリボーンは言うまでもなく機嫌が悪く……

「隼人……お前一度死ぬか?」

さらっとリボーンの口から出て来たのは軽く受け流せるような冗談なんかではない…

それは手に握られている愛用の銃が鈍い光りを浮かべていることが裏付けている。

それに慌てて深いお辞儀と共に緊迫した声で謝罪をする。リボーンはそれに興味がないと言ったふうで銃を懐に忍ばせた。それを合図とばかりに隼人が続ける。
「す、すみません!!いや……それがですね…………先代がお造りになられたという例の人形が…」




「あの店の主人……面白いね。」

「『あの』って何処のだ?」

茶葉を蒸らすために放置しておいたポットに手を伸ばし二人分のティーカップに紅茶を注ぐディーノ。ソファに腰を下ろし、窓越しにイタリアの町並みを眺める雲雀に振り返らずただその琥珀色を見つめる。

揺れる琥珀に先日見た人形の髪が重なった。

「…あの人形の店だよ。まだ幼さが残ってるし……あの店員とそう変わらないよね?」

「んあ?あぁ…リボーンのことか。確か15、6じゃなかったかな。だけど、お前が興味持つなんて珍しいな。」

呆然としていた所にいきなり声をかけられた物だから危うく手にしたポットを倒しそうになる。しかしそれはなんとか防ぐことが出来た。まぁ、その代わりに情けない声を上がった訳だが。

そんな失態を隠すべく慌ててトレイに茶の入ったティーカップとソーサー、ちょっとした茶請けを用意して運ぶ。

今になって後で茶を入れれば良かったと後悔してはいたが、なんとか慎重にトレイを運んだためにティーカップから零れることはなかった

「クス……また逢いたいな。」

「逢いたい……?オイオイ、こんな平和な通りで騒ぎ起こすなよ?」

硝子で作られた机にトレイを置くと銀作りのトレイがカタン……と音をたてる。その振動で重ねていたソーサーもカチャリ…と音をたてた。


「別に貴方に関係ないでしょ?」

「ったく……」


トレイからソーサーを一枚、雲雀の前に置く。続いてその上にティーカップを一つ。

茶葉の香が僅かに鼻孔を擽る。

「それにしても………相変わらず、紅茶いれるの下手だよね」

そう言い口に含む雲雀に苦笑に満ちた表情を向けた。

**

ザワザワ賑やかになればそれは昼を過ぎた証拠……


朝の静けさが嘘のようだ

通りは違えどボンゴレがある通りまでその喧騒が聞こえてくる

しかし、今日は例外。


いつもは表通りから風に乗って届くだけの喧騒……しかし今日はそんな静かな裏通りである筈の人形屋の前に人だかりが出来ている。

ショーウインドーには一体の人形…


「なんだ…噂は嘘じゃないか!」



「やっぱりな。人形にそんなことあるはずないし」


「帰りましょうか…」



口々に不満を漏らす人々………


誰かが口にしたこの一言で皆ゾロゾロと店の前から姿を消した。

朝から2度ばかりこうやって大きな団体が店の前を埋め尽くした。

しかし、それももう無くなるだろう…

噂が広まるのは確かに早い…

まぁ、これだけ噂が入り交じるメインストリート……。すぐに新しい噂が持ち上がるためにこの噂に興味が薄れるのも時間の問題。嘘だと分かれば尚の事。

作業室となっている二階の窓からリボーンがその様子を眺める。ザワザワと耳に付く雑音に舌打ちをすれば外からしたそれと重なった

「誰が流したんだ、馬鹿馬鹿しい!閉じてた人形の目が開く事なんかねぇだろう」

まさに骨折り存のくたびれ儲けの状態に男はもう一つ舌打ちをしてゾロゾロ動きだした集団の後に続いた。

「騙されるほうも騙される方だろ」

リボーンは呆れながら散り散りに去っていく人だかりを見ていた

「まぁ…嘘だと信じ切って貰わねぇとこっちとしても困るからな。せいぜい騙されててくれよ?」

エスプレッソに舌鼓を打つ

カラン……

「……なんだ開いてるじゃない」

「今日は定休日だって書いてあんだろぉが!」

鳴るはずがない扉の鐘の音に呼ばれて現れたのは明らかに不機嫌そうな隼人だった。
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