パラレル

□久しい旧友
1ページ/3ページ

時は遡り江戸の世の此処は吉原。遊郭の立ち並ぶ華やかな場所。
昼は他の街と比べてもそう違いはない。少しばかり客の目を引くために豪華な造りの建物が目立つと言う事を除いては。
打って変わって夜の吉原の顔と言うのは人の往来も多く賑やかさに拍車が掛かり、華やかさも幾重にも増す。

表通りでは花魁道中…遊女達が茶屋を目指して歩く。これは現代で言うところのパレードのようなもの……1番美しく着付けた花魁が先頭を切るような豪華な一行。因みに花魁と言うのは遊女の中でも、位の高い遊女の事である。

しかし光と闇の関係のように華やかなこの世界と別の…裏の世界もある。

優美なこの通りにある細い路地を行った先−−そこに遊郭がもう一つ…

表通りと比べれば些か華やかさは劣るもののこちらにも人の影がちらほら見える。

『寄って行ってくんなんし』

近くの茶屋の前で甘ったるい声で客を引くのはまだ年若い……彼等は陰間。此処の茶屋は男である陰間のためのもの。言葉は悪いが率直に言えば男の身を商品としている言わば商品ケースのようなものである。

客は此処から気に入る陰間を指名し座敷に上げる。

このご時世、生活難から遊女も陰間の数も少なくはない。先日も…また一人、此処へ売られて来た少年がいた。
名は綱吉…しかし、後にお綱と呼ばれるようになる。
最高位である花魁の一人…歳もそう違わない蓮美に今は教えを受けているも、座敷に上がる日もそう遠くはないだろう。金子がないから身を売らねばならないのだから、早く座敷に上がらねばならない。

高い金を払った遊郭としても働いて貰わねば困る。特に主人が変わった今…すぐに座敷へ上がる者が大半となっていた。

陰間は金子に困っているとはいえ、表通りの遊女には敵わぬも位の高い者の中には綺麗に着飾る者もいたし、そういった陰間を囲う者も少なくはなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ