パラレル

□久しい旧友
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「これはまた……珍しい方が」

「蓮美姐さん、御座敷の準備を…」

襖の開け放されている部屋の前…。
綺麗に磨かれている板張りの床にあどけなさの残った少年が座って三つ指を付けている。茶の癖っ毛を揺らして頭を垂れ、控えめに声を掛ければそのまま返答を待った。

−−−前日引き取られた綱吉だ。


「えぇ……」

その声に部屋の奥の窓枠に腰掛けて闇色の帳を下ろした町並みを眺めていた人物が振り返る。短い答えを返し、長い藍色の髪を手櫛で整え結い上げる蓮美と言う人間もまた陰間。瞳は日本人には滅多にいない…緋色と髪と同色である藍色のオッドアイ。

「ありがとうございます、綱吉君」

部屋の前で傅く綱吉と呼ばれた少年に微笑みを向けて赤い窓枠に置かれていた小振りの簪を纏めてある髪に刺した。

藍の中に白い牡丹の飾りが凛と咲き誇った。

髪を弄る手を下ろし、もう一度外の様子に視線を這わせる。
白い項に掛かっている後れ毛が夜風に揺れた。
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