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□firefly
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[Firefly]
英語の教科書に出てきた単語に目を奪われた。
[fire]はつまり火
[fly]とは確か飛ぶという意味だっただろう。
それくらいは俺にだって分かる。「飛ぶ火」ってなんだろう・・・。なんだか、ホラーみたいな・・
なんだっけ・・・あれ・・「火の玉」?

「全く、辞書を引くってことを覚えなよ、綱吉。[firefly]っていうのは蛍っていう意味だよ。」

結局分からず、雲雀に問う事にした綱吉。しかし、自分の直訳を説明し、頭に浮かんだことまで明確に話した所で雲雀に持っていた参考書で頭を軽く叩かれた。

今、現在は雲雀の家。勉強の苦手な綱吉のためにと自分の部屋を開放して勉強を教えていたのだった。

「だ、だって・・・。」
「だってじゃないよ。想像力は評価してあげるけど・・・。分からないんだったら辞書を引く。良いね?」

顔を一気に紅潮させる綱吉に優しい声音で話しかけながら先程参考書の面で叩いてしまった頭部を優しく撫でた。声と比例するようなその行為に綱吉はくすぐったそうに瞳を細めた。
(一喜一憂ってのはこの事かな?)
と、雲雀がそんな思いを馳せていると、綱吉が満開の笑みで雲雀に向き直った。
不覚にも頬に熱を帯びた雲雀はそれを綱吉に察しられないように頬杖を付いて少しばかり手入れの行き届いた自分の家の庭に目をやった。
「雲雀さんは、蛍見たことあるんですか?」
「蛍?・・・・最近は見てないけど何回か見たことはあるよ。」

綱吉の問いかけに驚くばかりだった雲雀だったが視線を綱吉に戻せば応える。雲雀の応えを待つ綱吉の表情はまさにキラキラと輝いていたが、その答えを聞いた頃には瞳まで輝いていた。
「俺、実は見たことないんですよ。そんなに綺麗なんですか?」

あまりにもその顔が可愛らしくて雲雀が微笑みを浮べると綱吉は一度キョトンと首をかしげた。でも、すぐに雲雀が話しだしたので深く考えはしなかったようだ。

「うん・・綺麗だよ。・・・凄く。星が目の前で舞い散っているみたいで。」

雲雀の言葉に綱吉は「良いなぁ・・・」と嘆息を漏らした。そんな様子を見た雲雀はスッと立ち上がると突然自分の押入れの中から一冊の薄い本のような物を取り出して再び綱吉の隣に座った。
「なん・・・ですか?」
その問いかけに応えぬまま雲雀はその冊子を開いて見せた。それは、アルバムで・・・そのアルバムの写真は全て蛍のもので埋め尽くされていた。

「綺麗なものって形に残さず留めておくものだと思うけど、これ見たら考え変わってね・・。」

「うわぁ・・・。綺麗。綺麗ですね、雲雀さん!!」
写真を通してでも分かるその美しさに綱吉は写真に釘付けになりながら感想を述べた。
その横顔を見て、雲雀も嬉しくなったのか微笑を浮べる。こんなに無邪気に喜ぶ愛しい子に何かしてやりたい・・と唐突に考えが浮かび、その横顔にそっと案を出す。

「綱吉。本物はもっと綺麗なんだよ?綱吉さえ良かったら、見に行かない?」

呼び止められた所で顔を上げた綱吉の表情が見る見るうちに驚きのものに変わっていくのが手に取るように分かった。もともと感情の起伏が激しい子だ。それが、いつにも増してころころと変わる。今になっては、嬉しさに満面の笑みを浮べて雲雀の腕に抱きついていた。
「本当ですか?雲雀さん!・・・・約束ですよ?!」
「うん、約束。」

キラキラ舞い散る蛍火がどんなに綺麗か・・・可愛い君に教えてあげる。
でも・・・
きっと、今年は綺麗な蛍火よりも・・
その儚い光に照らされた君の横顔に目を奪われるんだろうね・・・

「大好きです!雲雀さん!!」
「全くゲンキンな子だね・・・。まぁ、良いけど・・・。僕も大好きだよ、綱吉。」
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