紫隻鬼愛
□そんなキミが好き
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武田軍と長曾我部軍の戦のさなか、佐助は一人敵本陣へと駆けていた。
「へぇ〜アンタが四国の鬼さん?」
銀髪で左目を覆った男の前にひらりと現れながら言った。
「ああそうだ。お前は…忍か?にしちゃあずいぶん派手だな」
豪快に笑う相手──部下に兄貴、兄貴と慕われている漢らしい雰囲気はどこかで…。
「あ、龍の旦那に似てるんだ」
ぽんっ、と手を打って言った。
そうだ、この男は主の好敵手とよく似ている。気質といい片目が眼帯で隠れているところもそうだ。
「あん?誰だよそいつァ?」
「奥州の独眼龍。アンタそいつにそっくりなの」
「ああ!伊達とかいう…って一緒にすんな!」
納得したかと思ったら、いきなり憤慨し出した。
「えぇ〜だってホントに似てるよ?強さとかも案外おんなじなんじゃないの〜?むしろ負けてたりして」
総大将を倒しに来たはずだが、反応がおもしろくて今しばらく会話を楽しむことにした佐助。
「ふざけんな!俺の方が奴より上だ!!」
「じゃあ何が勝ってるっての?」
にやにやしながら言うと元親はふんぞりかえった。
「例えば!」
「例えば?」
「奴と違って…!」
「奴と違って?」
うんうん、と聞いてやると胸を張って自信満々に言い放った。
「俺は右目が見える!!」
(やだこの子バカわいい……!!!!)
この瞬間佐助は恋に落ちましたとさ。